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最近のノロウイルス 血液型との関係は

最近のノロウイルス 血液型との関係は

ノロウイルスの話を進めるためには、ノロウイルスの分類の歴史を整理しておかないといけません。

 1968年、アメリカのオハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した胃腸炎の糞便から検出されたウイルスを“ノーウォークウイルス(NV)”と命名しました。1972年に電子顕微鏡で形態が判明し、“小型球形ウイルス”と命名されました。その後遺伝子配列がわかり、“ノーウォークウイルス(NV)”となりました。ウイルスの分類は、“”、“”、“”、“”にだんだん細かく分類されます。“ノーウォークウイルス(NV)”は“”の名前です。”カリシウイルス科”には5つの“”があり、その1つ、“ノロウイルス(NoV)属”に分類されます。2002年までは“ノーウォーク様ウイルス属”と呼んでいましたが、“ノロウイルス(NoV)属”と呼ぶようになりました。“ノロウイルス(NoV)属”の“”は1つだけで“ノーウォークウイルス(NV)”です。

 2011年のある会議で、正しい呼称の“ノーウォークウイルス(NV)”を使用するよう発表がありましたが、現在でも“ノロウイルス(NoV)”の呼称で使われているのが現状です。

 このあと、“ノロウイルス属”の“ノーウォークウイルス種”のことを、俗称の“ノロウイルス”で説明させてもらいます。

 ノロウイルス”は、遺伝子のタイプで、7つの遺伝子群(ジェノグループ)に分けられます。GⅠ~GⅦです。人に感染するのは、GⅠ、GⅡ、GⅣです。中でもGⅠ、GⅡが最も感染します。さらに、GⅠが9種類GⅡが22種類の遺伝子型に分けられます。今までで一番流行したのは、“GⅡ.4”(GⅡの4番目の遺伝子型)がほとんどでした。“GⅡ.4”は変異が多いので免疫がつきにくいのです。さらに、最近では、“GⅡ.4”以外に新しく“GⅡ.2”、“GⅡ.17”などが検出され、免疫を持っていない人がたくさんいます。ちょっと混乱しやすいのですが、2015年から遺伝子型の表記が整理され変更されました。GⅡ.4は“GⅡ/4”と表記されていましたが同じウイルスです。しかし、“GⅡ.17”は“GⅡ/11”だったもので、“GⅡ/17”ではありません。

 最初に見つかったウイルスは、1968年に見つかったことから、Norwalk68株“と名前が付けられました。この株は、”GⅠ.1“に分類されます。この株には面白い特徴があります。O型は感染しやすく、A型は発症しやすく、B型は発症しにくいのです。また別の”GⅠのウイルス“での実験では、A型とO型が感染しやすく、B型は感染しにくい結果でした。”GⅡ.4“では、血液型と感染のしやすさは無関係でした。   

2006年、ホテルの結婚式に出席した女性客が宴会場の近くで嘔吐され中性洗剤で掃除をしました。ウイルスが死なず乾燥して浮遊し、ホテルの換気で客室に拡がり、3日後から347人が感染しました。“GⅡ.4”の変異株(2006b株)だったので、これを機に2006/2007シーズンは全国ですごく流行しました。それまでは牡蠣が原因で発症した患者が多くみられましたが、その後は人から人の感染が多くなりました。2012年“GⅡ.4”の変異(Sydney2012株)で流行がみられ、2014年には“GⅡ.17”の流行が認められました。2017年1~2月の“キザミのり”による広域感染は“GⅡ.17”が原因でした。2017/2018シーズンは、“GⅡ.4”が69%、“GⅡ.2”が16%、“GⅡ.17”が5%、“GⅡ.5”が5%でした。ちなみに平成29年の食中毒事件の病因は、カンピロバクター・ジェジュニが31.6%、“ノロウイルス”が21.2%、アニサキスが22.7%でした。食中毒患者数の病因は、“ノロウイルス”が51.6%、カンピロバクター・ジェジュニが14.1%、病原性大腸菌が7.4%、ウェルシュ菌が7.4%、サルモネラ菌が7.2%でした。

 ノロウイルス”は感染力が強く、ウイルス100個くらいでも感染します。感染者の糞便1グラム中に10億個以上、吐物1グラム中に100万個以上のウイルスが居ると言われるので、少し触っただけでも感染する可能性があります。また感染力は、4度では2ヶ月、20度では1か月続きます。感染してから1~2週間(長いと4週間)は菌の排出が見られるので、症状軽快しても感染に気を付けねばなりません。

 ノロウイルス”の感染経路は、食物(シジミ、アサリ、牡蠣など)からと、感染者の糞便や吐物が原因の人から人への感染があります。人から人への感染が多いのですが、便所、ドアノブ、蛇口、手すりなどを介してうつります。最近では、感染者の症状が無い人(無症候性キャリアー)が原因になることも多い事が分かってきました。そのため感染対策が困難な場合もあります。A型肝炎も感染者の糞便から感染しますが、下水処理場が整備されてA型肝炎は少なくなりました。しかし現在、“ノロウイルス”は下水処理場で処理できないのでウイルスが入った処理水が川に流れます。河口近辺では”ノロウイルス”が多くいる可能性が高く、河口から遠いとウイルスが少ない可能性が多いので、どこで取れたのかが問題になります。

 ノロウイルス”は85度、1分で死滅します。普通の消毒では死滅せず、次亜塩素酸ナトリウムが効きます。便や吐物が付着したものには、0.1%(1リットルの水にハイター、ブリーチなど20mlの割合)。便座、ドアノブ、蛇口、手すりなどには、0.02%(1リットルの水にハイター、ブリーチなど4mlの割合)。衣服、タオルなど洗うときは熱湯に付けてからか漂白剤を使用してください。

 ノロウイルス”の検査はRTPCR法などのウイルス遺伝子検査では高精度ですが、費用が数万円かかります。簡易診断キットで3000円くらいで検査ができます。3歳未満と65歳以上では保険適用になっています。しかし、精度が問題で、GⅡ.4以外では精度が落ちるのと、ウイルスがあっても陰性となることもあります。インフルエンザのように陽性なら有効薬を出せますが、“ノロウイルス”にはありません。また、本当は陽性なのに陰性となった場合、陰性だから感染源にならないと思って行動すると大変なことになります。“ノロウイルス”の簡易診断検査はほとんど意味がありません。

 潜伏期間は1~2日。発熱、嘔吐、下痢が主症状で、小児は嘔吐からが多く、成人は嘔気、下痢から始まることが多いです。そのような症状が出たときには市販薬に頼るのではなく、医療機関で診てもらった方が良いと思います。膵炎、胆嚢炎、肝炎などとの怖い病気との鑑別が望ましいです。下痢止めはできるだけ使用しない方が良いです。当院では診療時間内なら約30分で結果が出ます。終業の1時間前くらいまでに診察されてください。

投稿日:2018年12月5日
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